触れられない別れ〜いよいよその時が

サク

毎日のように会ってLINEで四六時中話していた。
楽しくて仕方がない。毎日が輝いていた。

自分と同じような価値観を持ち、気に入らない事が何もない。違いはあるものの、それは寧ろ発想のバリエーション程度の差でしかない。

抱き合えばエネルギーが補完される感覚があり、セックスすれば更に元気になる。

こんな人がこの世に存在する事か奇跡としか言いようがない。2人で過ごす時間は、何をしていても幸福感でいっぱいだった。

しかし、別れの時間は着々と迫ってきていた。

2人とも別れの日に向かう自覚は確実にあるはずなのに、その時の事だけは話に出さなかった。
この奇跡的な出会いを、別れの悲しみで潰したくなかったのだ。
ひとたび別れを意識してしまうと、その恐怖で潰されそうな感覚があった。きっと彼女もそうだと思う。

ギリギリまで、精一杯楽しもうと全力で楽しんだ。別れが来るその日まで、幸せを謳歌しようと懸命だった。

彼女の引越しの準備は、2週間前から始まってた。少しづつ別れが現実化していった。

自分も出来るだけの手伝いをした。
大型の不用品を捨てに行ったり、ダンボールを補充したり。とにかく彼女の引越しがスムーズに進むよう協力した。

そんな中でも2人は別れの話には触れなかった。

翌日、彼女旦那さんが手伝いに入る。もう彼女と自由に会うことは出来なくなる。

いよいよその時か来る。。。

その前に、初めて2人で別れと向き合った。

2人して泣いた。
顔を見るだけで泣けてくる。
泣きながら強く抱きしめた。
泣きながらセックスもした。
そしてまた泣いた。
とにかく涙が止まらなかった。

2人とも別れる気は全くない。
そんな簡単な出会いじゃない。
一生に一度の出会い。
いや誰もが出来る出会いでもない。
到底別れるなど考えられない。

今は離れなければならない。
そのことが悲しくて泣いた。
離れたあとの寂しさが怖かった。

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