振り返って

アオ

東京に帰りました。
一緒にいられる時間は限られていたけど、可能な限り密着してました。

くっついてさえいたら幸せで満たされるから。

離れている時LINEでは散々会話をしているのに、いざ面と向かうと黙ってしまう。

肌に触れると自然と思考が止まりボーッとしてしまう。

言葉より肌や空気から密度の高い情報を感じるから、わざわざ言葉にする必要がないような。

気持ちよく、うたたねしている時みたいに、何とも言えない安堵感に包まれます。

この感覚は本当に生まれて初めてで、それなのに懐かしいような、無意識にずっとそれを探していたような、不思議な気持ちになります。

ここが自分の絶対的な居場所だと感じるのです。

サクさんは
「何でだろう❓抱き締めると勝手に涙が出てくる。体が勝手に反応する」と、くっつくたびに鼻をグスグス言わせていました。

今回はOshoの瞑想的セックスを実践してみようと話していましたが、いざやってみると全然集中できませんでした。

第3の目を意識して…と思っていても、すぐに気が逸れる。

それよりもっと体で気持ちを伝えたい、もっと相手を感じ取りたいという思いに駆られ、体が動いてしまう。

言葉では足りないから、体で直接伝えたい。

無理はせず、やりたいようにやってきました。

気付いたら私は絶頂にこだわらなくなっていました。

少し前までそこに執着していて、絶頂を感じなかったらセックス失敗とすら思っていたのに。

密着して体を感じている事が幸せ過ぎて、それは別にあってもなくてもよい物となりました。

最終日、朝の早いサクさんは仕事の途中に会いに来ると前日に言いました。

寝てていいよ、顔を見たら帰るからと。

私は全く眠れませんでした。
いつ来るだろう、いつ来るだろうと気になってしまって。

せめて最後に抱き締めたくて。

睡眠不足で帰りの飛行機で酔いました。

会って子どもの話をしている中で、サクさんは昔ながらのお父さんで、子どもを愛してるのが伝わってきたし、家族を自分が守る、自分が家長という意識が強いだろうから、家族と離れて私と一緒になるなんて考えはないんだろうな、と感じました。

どう思っているのか聞けばいいのに、恐くて聞けませんでした。

ずっと気になっていて、今回それを直接聞かなければ、と決めていたはずなのに。

お互い、心は繋がっていて自分の片割れはこの人だと確信しています。

だけど現実世界との折り合いをどうやってつけていくのか❓

勢いで飛行機に乗ってしまったものの、どこに着陸してよいか分らず、そこまで燃料が足りるかも分からず、ハラハラするような落ち着かない気持ちが常に頭のどこかにあったのです。

そんな思いがあるせいか、別れが近づくにつれ、大好きな気持ちが溢れないように感情をセーブする意識が働きました。

妙に冷静で他人事みたいに状況を見ている自分を感じました。

きっと自分が傷つくのが怖くて予防線を張っていたのです。

あー、やっぱり聞けなかった。
またこのモヤモヤを抱えながら実生活を続けていかなきゃならないか…とうなだれていた矢先。

突然サクさんから

「アオ、死んじゃダメだよ。
一緒に長生きして、一緒に暮らすんだから」

とLINEが来たのです。

帰りの飛行機で機内モードにする直前に。

え、どうして急に❓
と思ったら。

身近な方が急逝されたそうで、動揺して書いたようでした。

この人。
この先。
いつか私と一緒に暮らすつもりがあるんだ。

嬉しくて涙が溢れました。
隣の席の人に気付かれないよう、息を殺してプルプル震えながら涙を流し続けました。

そして、ずっと言いたかった
「私、サクさんを看取りたい」を伝える事が出来たのです。

毎回見逃していた富士山もやっと見届ける事が出来ました。

瞑想的セックスには至れなかったけど、胸がいっぱいの再会となりました。

離れているのは辛いけど、また次に会えるまで頑張れる。

頑張らなきゃ、と思います。

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