夢の時間

サク

引越し前々日の夜にデートした。
これは出会った頃から約束だった。

お互い家庭があるので、夜に出掛けるのは簡単ではない。最初で最後の夜デート。いよいよその日になってしまった。

彼女はデート前にLIVE観覧に行っていた。
自分へのご褒美だ。

彼女は移住してちょうど10年。
きっと様々な思いが交錯しているであろう。
ほんとに大変な日々だっただろう。

待ち合わせ場所近くに着いた。
待つ間に彼女から教えて貰ったInstagramを開いた。

実に写真センスが良い。
自撮りなどはほとんどないが、自然の息吹や元気な作物など、生活の中でそれとなく見逃しがちなものを、綺麗に丁寧に載せてあった。

元気になろうと必死に頑張り続けていたのが、こうした写真からも伝わってくる。
彼女がこの街で一生懸命に生きてきた思いが湧き出ている。
生き方や人生に向かう姿勢が美しいと感じた。

LIVEが終わり合流し、近くの居酒屋へ歩いた。

桜の咲く夜の街はまだ少し肌寒い。
少し歩みを早めながら、店に入った。
予約などしていなかったが、偶然にも個室へと案内された。最後の夜のご褒美にうってつけの席になった。

最後だから、郷土の料理のものを中心にオーダーする。彼女は好きな日本酒を飲む。自分は東京からこっちに移ってお酒は止めてしまったので、ノンアルビール。この街で最初で最後の乾杯をし、宴が始まった。

向かい合って座った。
いつも横並びだったので、正面が良いという彼女の要望だ。

話しながら食べながら呑みながら。
彼女が食事をするのをよく見たのは初めてだ。

美味しそうに食べる。
お酒も美味しそうに飲む。
彼女も笑顔だ。
自分も笑顔だ。

これまで経緯を話した。
出会って3ヶ月を振り返った。
どこから恋に落ちたのか。。。
いつからこんなに深く愛したのか。。。

不思議なことがたくさん重なった、この奇跡的な出会いに、お互い「ありがとう」と言い合った。

涙がこぼれる。

彼女が手を差し出す。
自分はその手を握る。
手の感触を忘れないように、何度も何度も確かめ合った。

立ち上がってキスをした。

楽しい。。。
楽しくて堪らない。。。
食事がこんなに楽しいのは初めてだ。

悲しい。。。
悲しくて堪らない。。。
食事ごこんなに悲しいのは初めてだ。

至福の時間と悲しみの時間。
嬉しくて悲しくて、どんな顔をすれば良いのかが分からない。

そんな夢の時間も刻々と過ぎていく。
自分で時を止める力が無いのが悔しい。

居酒屋を出て、ホテルに移った。
日頃から使っていたホテルだか、夜来るのは初めてだ。

いつもはソファでひと息つくけど、彼女は酔いもあってか直ぐにシャワーを浴びて、ベッドに潜り込む。自分も合わせて直ぐにベッドに入った。

抱き合いキスを繰り返す。
たくさんしてきたキスが、こんなに愛おしいもののかと感動して、涙で目が曇る。

彼女の全てを愛した。
彼女も自分の全てを愛してくれた。

全身をエネルギーが駆け巡る。
いわゆる普通のセックスとは明らかに違う、何かを交換している。重なり合う程にそのエネルギーは、深く心と身体に刻まれる。

他のセックスとは比べ物にならない。。。
これまで散々色々なセックスをしてきた自分が言うのだから、間違いない。

ツインレイのセックスは特別なのだ。

合間合間に話をする。
もう伝えたい気持ちが溢れかえり、上手く表現出来ない。彼女も恐らくそうなのだろう。。。

ありがとう。。。ありがとう。。。
そればかり言い合った。

そんな時、携帯電話が鳴った。
彼女の旦那さんからの電話だった。
それに応える彼女。

特別な夜
最初にして最後の夜
夢の時間は、こうして終わっていった。。。

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