やっぱり夢のよう

サク

宿泊先に到着し荷物を置いて直ぐに抱き合った。
この抱擁をどれだけ夢見たことか。

抱き合うと直ぐに離れる前の感覚に戻る。

特殊な衝撃なんかは全くない。

とにかく安らぐ。

帰るべきところに帰ってきた感覚。

呼吸が深くなる。

以前のままだ。
この2ヶ月間が、まるで無かったかのような感覚だ。タイムスリップしているみたいだった。

以前は感じなかったことに幾つか気がついた。

細胞が喜んでいる。

身体の奥底からエネルギーに満ちていく。

「こんな事を毎日やっていたら、そりゃ元気になるよね」と彼女に伝えると、彼女も頷く。

私達は抱き合うと言葉を交わさなくなる。
ただただ抱き合うだけなのだ。

その理由が分かった。
抱き合うことで身体全身で会話しているのだ。

通い合うエネルギーで情報交換し、それを感じ取るのに精一杯で話す余裕がないことと、言葉よりも情報量が多く確かだから言葉が要らなくなる。

毎日抱き合っていた頃は全く気が付かなかった。

こうして彼女を独り占めにする至福の時間が始まっていった。

もちろんセックスもした。

2ヶ月間、お互いに誰ともセックスはしていない。当たり前だと思うかもしれないが、自分にとってはもの凄く稀なことだった。

彼女と会うまで、週に一度は誰かとセックスしていた。

セックスカウンセラーの活動は2年前から休んでいるが、活動中から続く女性がそのままセフレ化していた。

しかし彼女と出会って、本当のセックスの在り方を実体験してしまってから、誰ともしたくなくなった。

この2ヶ月間、誘いもしなければ誘われても断っていたのだ。

だから自分にとって2ヶ月間誰ともセックスしていないのは、とても珍しいことだった。

そういう過ごし方をした事がなかったので、実はちゃんとセックス出来るかどうかが心配だった。

不思議なもので、2ヶ月間はほとんど性欲が湧かなかったから、本当にできるのか?が心配になっていた。

しかし会う2日前に突如性欲が復活した。
彼女と電話で話していたら突如勃起したのだ。

そんなこんなの伏線があってからのセックスだったので緊張もしていた。

彼女も誰ともしていない。
それはよく分かっていたから、きっと彼女もセックスに一抹の不安を持っていたはずだ。

しかし結果は不安など一切必要なかった。

お互いに感度が上がっていて、離れる前よりも確実に快感が上回っていた。

会っていなかったブランクは、ふたりの何かを変えてしまったようだ。

彼女が滞在する3日間、少しでも時間があれば駆けつけると彼女にも伝えた。

やっぱりふたりの時間は夢のような時間だ。

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